2022.03.24

世界最先端「実験都市」深センに見る中国の最新IoT事情

深圳の街並み
深圳の街並み

最先端のIoTテクノロジーを実社会のビジネスやサービスに迅速に取り入れ、効果的に活用するにはどうすればいいのでしょうか。IoTの最先端を走る中国では、一つの街全体を巨大なIoT実験場として、自動運転タクシーやバスなど先進的なIoTの実用化に向けた取り組みが加速しています。中国の最新IoT事情を紐解くと、そこから日本企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるヒントが見えてくるようです。

IoT技術で信号無視を取り締まる「電子警察」が交通事故削減に貢献

中国では、人々の暮らしの「意外なところ」にIoTが浸透しています。その一つが交通事故削減の取り組みでのIoT活用です。中国における交通事故原因として多いのが、歩行者や自動車による「信号無視」でした。歩行者と自動車の衝突は大きな事故につながりやすく、赤信号を無理に渡ろうとする歩行者の問題をいかに解決するのかが大きな課題でした。

そこで、中国で行った対策が「電子警察」と呼ばれる「IoTを活用した取り締まり」です。交差点に多数の監視カメラを設置して、赤信号を無視する歩行者や自動車を検出し、違反した歩行者を見つけると音声で警告したり、違反者の顔を大写しにして録画した違反映像を電子掲示板で流したりするのです。

さらに、AIを駆使して顔認識し、違反した人物を特定、罰金の支払いを命じます。IoT機能を備えた「街中の監視カメラ」と「AI画像解析による顔認識」を組み合わせて,信号無視を取り締まり、交通事故を削減しようという取り組みです。

日常生活に必須なIoTが浸透している中国QRコード決済から「顔認証決済」へ

中国では、電子警察以外にもIoTを有効活用したさまざまな取り組みが、市民の日常生活に浸透しています。広大な国土と膨大な人口を持つ中国では、快適な市民生活を維持するのにIoTが広く活用されているのです。

例えば、電気、ガス、水道などのライフラインの維持管理においても、国土が広ければ、検針員が各戸を回るのも大変な作業です。そこで、各家庭のメーターをIoT化し、ネットワークを通して自動的に集約、蓄積しAIを駆使して管理、分析すれば効率が高まり、コストや時間、手間も大幅に軽減できます。

また、市民の通勤や勤務、日常生活にも、IoTやAIが浸透し始めています。通勤しているビジネスパーソンが出退勤の時間を記録する際にも、IoTカメラとAIによる顔認証を使えば、出社時にカメラに自分の顔を写すだけで、AIが本人を特定し、出社時間を打刻できます。自分自身の身体を使った生体認証ですので、社員証カードの貸し借りといった不正も防止できるという利点もあります。

IoTが普及することで決済方法も様変わりしつつあります。中国ではすでに、2010年代からスマートフォンのQRコードを使ったキャッシュレス決済が急速に広がっていましたが、近年、浸透しつつあるのが顔認証を使った決済です。

例えば、顔認証機能を搭載した自動販売機なら、カメラに顔を映してパスコードを打つだけで飲料が購入できるといったことが可能になります。もちろん、顔情報や決済方法を事前に登録しておく必要はありますが、このような生体認証を使った決済が普及すれば、財布もスマートフォンも持ち歩くことなく、自分の身体ひとつで買い物ができる未来が到来するのも夢ではないのかもしれません。

中国・深センはIoTの「巨大実験都市」先進的IoTの取り組みを日本企業のDX推進に活かす

日常生活のさまざまなところにIoTが浸透している背景には、中国が国を挙げてIoTの利活用を推進していることがあります。中国では、工業・情報化部などが主導で「IoT新型インフラ建設3カ年行動計画(2021~23年)」を策定。2023年末を目処に中国主要都市を対象にIoTを活用したインフラ整備を進め、IoT接続端末数を20億台以上にまで増やす計画です。

こうした国を挙げての取り組みの象徴的な都市が、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センです。深センは、以前からテクノロジーの活用に積極的な地域だったのに加えて、政府が積極的にIoT推進を後押ししていることを受け、無人コンビニや無人薬局などIoTを駆使してイノベーションを実現しようという取り組みがいくつも実践されています。その中には、日本では実用化にまだまだ時間がかかりそうな取り組みなども、世界に先駆けて実施されています。

例えば、運転手不要で完全自動運転で乗客を載せて走る無人タクシーの実用化に向けた実証実験です。スタートアップ企業のAutoXが深センで行ったのは、万が一に備えるための人間の運転手(セーフティドライバー)すら同乗せず、事故回避のための遠隔操縦もしない、「完全自動運転」によるタクシーのテストでした。2020年には商用サービスも開始しています。

そのほかに深センでは、5G通信を活用した遠隔運転バスの実験も行われています。4Gや5Gなどの「通信技術」、カメラやLiDAR、GPSなどの「各種センサー」、各種センサーからの情報から道路や周辺の状況を自律的に判断する「AI」など、さまざまな最先端のテクノロジーを組み合わせ、遠隔操作での運行を可能としたバスです。クラウドと連携して、周辺の交通状況や高度なダイナミックマップ(自動運転用の地図)とやり取りする機能を備えることで完全な自動運転を目指しています。

さらに、ドローン開発会社のイーハンは二人乗りの空飛ぶドローンEH216を使ったドローンタクシーの実験も実施。深センは都市そのものが「巨大なIoTの実験場」といえるのです。

中国では、深センのように実際の街を利用した実験がいくつも行われ、IoT最先端の国家としての道を進もうとしています。ACCESSも深センにオフィス分室を置き、継続的に先端の情報を収集しています。IoTを活用したイノベーションを検討している日本の企業に対して、コラボ レーションが可能なスタートアップや技術、製品、ソリューションを紹介するといったサービスなどを提供。日本企業のDX推進を支援しています。