位置情報がリアルタイムで把握できる「ビーコン」は、勤怠や仕事の管理などで需要が高まっています。大手企業や商業施設、工場の「IoT化」などにも実際に利用されはじめており、今や当たり前になりつつあるビーコンですが、導入を考えている企業にとっては、本当に必要なものなのか気になるはず。
今回は、実際の事例を元にビーコンを導入するメリットを紹介します。
位置情報を把握できるだけならGPSと同じなのでは?と思う人も多いでしょう。ここではGPSとビーコンの違いや、なぜリアルタイムで位置情報を把握できるのか、その仕組みを詳しく解説していきます。
ビーコンとは、「Bluetooth Low Energy(Bluetooth LE)」という信号を利用した技術やデバイスのことをいいます。この信号が利用者の持っているスマートフォンのBluetoothと連携することで、利用者の位置を把握する仕組みです。そうした技術が使用されている例としては、2016年に流行し始めた「Pokémon GO」が有名でしょう。
このほか身近なものでは、イオンモールや三井物産などのショッピングセンターの施設内マップや、お買い得情報の配信に利用されています。ビーコンを利用することで、位置情報の把握だけでなく、Bluetoothを使った情報収集や発信サービスを行うことが可能になります。
よく間違われがちな「ビーコン」と「GPS」。GPSとは、Global Positioning System(全地球測位システム)の略ですが、こちらが位置情報を把握できるのは、人工衛星から発する電波を利用しているためで、ビーコンとは発信源が異なるのです。
GPSの信号は人工衛星から受けるため、建物内では受信できなくなりますが、ビーコンはBluetooth信号を用いているので、専用の端末やアプリがあれば建物内や地下でも利用することができます。
では、ビーコンを実際に導入している企業や施設を見てみましょう。多様な場面で使用されていることから、幅広い活用法とニーズがあることがわかります。それぞれの導入事例から見えるメリットを詳しく紹介しましょう。
工場や倉庫では、規模に関わらずビーコンを導入することで、作業効率が大きく変わることから、多数の企業で利用されています。例えば、大手物流企業や機械装置の組み立てを行う企業などでは、運送用のトラックや台車、商品の場所など、従業員自身の把握が必要な作業に大きく貢献しています。
金属加工に携わる ケーアイ工業株式会社では、「作業指示書の位置情報をビーコンによる見える化」をしました。作業の進捗や正確な工数が把握できることで、確認作業の負担が軽減され、作業効率の向上につながります。
大型施設では、様々な場所でビーコンが導入されています。例えば、イオンモールなどのショッピングセンターや、ディズニーリゾートをはじめとしたテーマパークです。
ディズニーリゾートの事例としては、フロリダのディズニーワールドでの「マジックハンド」が特徴的といえます。マジックハンドとは入場チケットやレストラン、ショップでの支払いに幅広く活用できる手首に巻くデバイスのこと。この導入によりお客様の行動調査が可能になり、売れる商品分析や最適な施設の配置、またニーズに応じた組み合わせプランなどのマーケティングに役立っています。
公共施設でビーコンを導入している事例はまだ少ないですが、一例として高知県立図書館で活用された事例があります。2017年6月から12月にかけて、ビーコンを活用した図書の貸し出しを行いました。これは「びーこん館」という専用のスマートフォンアプリを利用する方法で、自分が探している本の大体の位置が把握できるというものです。
現在はこの検証実験は終了していますが、博物館や美術館などの公的な施設でも積極的にビーコンの導入が進んできています。
ビーコンを導入することで、様々なメリットが生まれます。しかし、これから導入を考えている企業にとって一番気になるのがビーコンの精度でしょう。果たしてビーコンはどのぐらい信頼できるものなのか。その現状の精度や、それを向上させる方法について詳しく紹介していきます。
ビーコンの位置情報は常に正しいわけではありません。少なからず周囲環境の影響を受けるので、正しい位置を検知できないといった問題が絶対に起こらないとはいい切れません。
しかし、誤検知などの問題は、範囲が広い、配置数が多いといった特定の利用シーンに限られてきます。実際に導入している大型施設などでは、利用者が大きな問題を感じることなく便利に利用できているため、使用用途や場所に応じて適切なビーコンを設置することで精度を100%に近づけることは可能といえるでしょう。
先ほど紹介したように、ビーコンの精度を上げるには、場面に合わせて適切な活用をすることが重要です。例えば大きな工場でエリアごとにビーコンを設置すると、ビーコンの数が多くなり、誤検知が発生しやすくなります。この場合は、ビーコンの電波強度データを取得して不要なデータを削除すれば検知精度を向上させることができます。
また、アプリを利用したビーコンなら、移動速度が速いと位置情報のズレが生じることがありますが、常にビーコンアプリを起動させておくことで、検知しやすくすることができるのです。
様々な企業で導入されはじめているビーコン。美術館や博物館など、事例が少なかった公共施設でも利用は増えてきており、ますます需要が高まってきています。業務の効率化だけでなく、IoTにも活用できるビーコンは、これから私たちの社会では欠かせない存在となっていくことでしょう。