2021.09.17

IoTカメラ+AI+位置情報のトレンドは 「危険予知」と「防災・減災」

IoTカメラの価値
IoTカメラの価値とは…

産業機器や家電などをインターネット経由でコントロールできるIoTデバイスの市場が拡大しています。なかでも注目されているのがIoTカメラ。高精細な映像をリアルタイムでやり取りできる5Gをはじめ、Bluetooth 5.0、LPWAといった情報通信インフラの高度化・多様化によりIoTカメラの利用範囲がさらに拡大。AIにより映像解析や位置情報と組み合わせることで、道路・鉄道などインフラの監視、危険予知、防災・減災へと応用の可能性が広がっています。

通信技術の高度化・多様化で可能性が広がる

総務省の令和3年版情報通信白書によると、世界のIoTデバイス数は2022年には300億台を超えると予測されています。今後、IoTはさらに進展し、工場設備や物流システムなどの産業分野、家電や玩具、スポーツ機器などコンシューマー分野、さらには、医療・ヘルスケア分野、自動運転車や無人航空機など自動車・航空宇宙分野など、さまざまな用途での利用拡大が見込まれています。

IoTの利用拡大を後押ししているのが、5Gなど情報通信インフラの高度化・多様化です。2020年からサービスが始まった5Gは、従来の4Gと比べて高速大容量・多数同時接続・低遅延という特徴を備え、4G通信では難しかった8Kカメラの高精細画像など大容量の映像情報を送受信し、解析できるシステムを構築できるようになりました。

また、基地局やアクセスポイントなどを介さずに機器同士で直接データを送受信できるBluetoothも進化しています。Bluetooth 5では通信速度が従来比の2倍、距離が4倍、容量が8倍に強化され、Bluetooth 5.1では方向検知機能が追加されて位置情報サービスにも応用できるようになりました。さらに、消費電力が低く、最長で数10kmもの長距離通信が可能なLPWA(Low-Power Wide-Area)もIoTに利用されています。

5Gの実用化で、より高精細な映像を無線通信でリアルタイムにやり取りできるようになったこと、さらに、Bluetooth 5やLPWAなど無線通信技術が進化したことは、IoTの可能性をさらに広げます。そうした中、今、注目されているのがIoTカメラです。

「IoTカメラ+AI」による画像解析で高度な見守り・監視が可能に

IoTカメラは現在、おもに見守りや監視の用途で利用されています。例えば、店舗前に並ぶ行列の人数、戸棚に陳列した商品を来店者が手に取る回数、レストランの各テーブルの空席状況の推移、会議室など施設の利用状況などを確認するシステムで実用化されています。

IoTカメラは、AI(人工知能)と組み合わせることで、今後、さらなる用途の拡大が見込まれています。あらゆるデバイスがインターネットにつながるIoTでは、利用者に最も近いエッジデバイス側に搭載したAIがリアルタイムでの画像解析処理を行い、必要な情報だけをクラウドやサーバーへ送る手法が採り入れられています。

IoTカメラとAIを組み合わせたソリューションでも、この技術が採用されています。IoTカメラで撮影したヒトやモノに対して属性や状況をAIで解析することで、顧客満足度の向上、販促・マーケティング活動、業務の効率化などにも活用でき、AIによる顔認証や行動パターン解析は犯罪者や不審者の検知、迷子や徘徊者の捜索などにも応用できます。

高精細で大容量な映像情報をやり取りして解析する際に、クラウド側での処理を大幅に削減することで、ネットワークへの負荷も軽減。例えば、製造ラインのリアルタイム監視・故障検知といった用途での利用も可能となるのです。

また、LPWA対応のAIカメラと、位置情報を発信するビーコンやGPSトラッカーなどと組み合わせることで、遠隔地にある事業所への不審者の侵入検知や危険な場所への作業員の誤侵入の警告、山間で行う畜産業や林業における家畜の管理や害獣の検知など、幅広い領域での安全確保や危険予知に役立てることができます。

「IoTカメラ+AI+位置情報」で防災・減災へと利用が拡大

IoTカメラとAIの組み合わせは、危険予知から鉄道や道路、電気・水道・ガスなど社会インフラの点検、そして防災・減災への応用が期待されています。例えば、鉄道会社では、車両の運転席や屋根の上にIoTカメラを搭載し、走行しながら架線柱や架線、線路、踏切などの状態を撮影し、AI画像解析により設備の変形や傾き、サビの発生、コンクリートの爆裂などの状況を自動的に検出するシステムを採用しています。


また、鉄道以外のインフラ点検でも利活用が進んでいます。高度成長期に整備された道路インフラや公共インフラは全国的に老朽化が進んでいますが、管理する自治体の中には予算不足・経験者不足で点検もままならないところが少なくありません。特に面積の広い自治体や公共企業では、橋梁、トンネル、送電鉄塔、ガス管、水道管といったインフラの保守で現地に赴く回数を最小限に済ませるために、IoTカメラとAI、さらには位置情報の活用が不可欠になりつつあります。


工場のスマート化にもIoTカメラとAIの組み合わせは有効です。工場内に多数あるアナログメーターを遠隔地から管理できるように自動化したい場合、IoTカメラをリーダーとしてアナログメーターに装着すると、AIがメーターの目盛りや数値を読み取ってデジタルに変換してサーバーやクラウドに転送、既存システムに大きく手を加えることなく、簡単かつ低コストでのIoT化が実現します。

また、常時監視は必要ないが日単位・週単位での検針が必要な電力、水道、ガスなどエネルギー管理系のメーターをはじめ、危険な箇所に設置されていて定時確認が必要な流量計、圧力計、温度計などの数値を遠隔地から安全に確認できるようになります。低消費電力で新たな電源設備を必要としないため、例えば、山の斜面に設置されたメガソーラーの稼働状況や設置状況を、作業員の危険や肉体的負担、検針ミスなどを避けて継続的に計測できます。

IoTカメラは、5G、LPWA、Bluetooth 5など通信技術の新しい選択肢が増えたことで利用範囲も大きく広がりました。さらに、「単なる映像(可視光)」だけではなく、赤外線や紫外線などの非可視光や、望遠機能やマクロ機能を併用した情報収集でその可能性は大きく広がります。こうして集められた膨大な情報にディープラーニングなどのAI解析、位置情報を組み合わせていくことで、「IoTカメラ+AI+位置情報」ソリューションの用途はさらに拡大していくことが期待されます。